以前、油が配管内を流れる場合の圧力損失dPについて計算例を示しましたが、流体が水の場合の計算もする機会があったので計算メモとして残してみます。
油のときの計算と異なる点としては、レイノルズ数が大きくなるため、ブラジウスの式ではなくニクラゼの式を使用しています。
これは水の動粘度が油と比べて小さいことが影響しています。
それでは、実際の計算方法を見てみましょう。
配管長さ 10 m
配管径 0.3 m
動粘度 0.893×10-6 m2/s
油の密度 1000 kg/m3
流量 0.2 m3/s
※本記事を参考にして計算する場合は自己責任にてお願いします。本記事によってトラブルが生じた場合にも一切責任は負いかねます。
圧力損失の計算方法
圧力損失は以下の式から求めることができます。
必要なパラメータの情報を計算しながら求めていきましょう。
まずは、連続の式から平均流速を求める
連続の式から流速を求めます。
流速vが 2.83 [m/s]と求まりました。
管摩擦係数λを求める
管摩擦係数は層流か乱流かによって計算式が異なります。
まずは、レイノルズ数を計算することによって層流・乱流かを判断します。
レイノルズ数から層流か乱流か確認する
レイノルズ数は以下の式で計算します。
配管長さ 10 m
配管径 0.3 m
動粘度 0.893×10-6 m2/s
油の密度 1000 kg/m3
レイノルズ数は、Re > 2320 で乱流となるため、計算結果によると乱流であることがわかりました。
ニクラゼの式
レイノルズ数が以下の範囲である場合、
管摩擦係数はブラジウスの式で求めることができますが、
今回はレイノルズ数がこの範囲より大きいので、ニクラゼの式を使用します。
この式は管路内が滑らかな内壁での流れの実測値と一致することが確認されています。
ここで覚えておきたいのは、管摩擦係数λはレイノルズ数Reだけの関数では表現できず、管内の壁面粗さにも依存するということです。
つまり、最終的には壁面の相対粗さを考慮した計算を行う必要があります。
(本計算においても、ムーディー線図による管摩擦係数λ´からΔp´も後述しています。)
尚、ブラジウスの式を使った計算は過去にこちらで計算しているのでご参照ください。
管摩擦係数まで求まったので管内圧損を計算
前項で求めた管摩擦係数から圧損を計算します。
滑らかな内壁の場合、1556 [Pa]と求めることができました。
管内壁の粗さが無視できない場合
ムーディー線図を用いた管摩擦係数λ´の求め方
例えば、相対粗さ ε/d = 0.002 の場合、
2.横軸のレイノルズ数、今回の場合は42450付近から縦に線を引く
3.上記二つの交点から縦軸左側の管摩擦係数を得る
今回は、λ´= 0.014 を得ることができました。
従って、
を求めることができます。
前項で求めた1556 [Pa]よりも少し圧損が増えたことがわかります。
相対粗さを市販の鋼管レベルで計算したため比較的影響は少なく見えますが、スラッジなどにより管内面の粗さが増す場合などはさらに影響が大きくなります。
まとめ
今回は、水が流れる直径0.3mで長さ10mの配管の圧力損失について求めてみました。
バルブやオリフィスに比べると圧力損失はかなり小さいものではありますが、配管長さが長い場合や流速が大きい場合などは影響が大きくなってくるので計算が必要です。
以上、配管の圧力損失を計算する際に参考にしていただけると幸いです。
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