構造物の応力を計算した際に疲労強度まで確認していますか?
繰り返しの応力が生じる構造物の場合、疲労強度計算が必須です。
特に溶接継手部は疲労破壊が生じやすいため適切な計算が必要となります。
今回は修正グッドマン線図を描く方法をまとめてみましたので紹介します。
※本記事を参考にして強度計算する場合は自己責任にてお願いします。本記事によってトラブルが生じた場合にも一切責任は負いかねます。
疲労強度評価の方法
疲労限度の範囲を描く
横軸に材料の降伏応力、縦軸にも同様に降伏応力を描きます。
降伏応力が240MPaの炭素鋼材の場合は下図の青色のような線が描けます。
プロット。縦軸に応力振幅、縦軸に平均応力。
応力のレベルをプロットします。
応力振幅と平均応力は次式から求められます。
仮に、応力の最大値が60MPa、応力平均が0の両振りであった場合、
図のオレンジ色の点がプロット箇所になります。
引っ張り圧縮の生じる両振りなのか、あるいは片振りなのかでプロットの位置がかわります。
修正グッドマン線図の書き方
修正グッドマンのは横軸上に材料の引張強さ、縦軸上に材料の降伏応力を取り、それぞれの点を結ぶように直線を引きます。
この時、直線は圧縮側へ伸ばします。
圧縮に対する強度は修正グッドマン線図を少し伸ばしたものに近い値を示します。
図の灰色の線が修正グッドマン線図を表します。
プロットした点が修正グッドマン線図より下にあれば疲労破壊の問題はないと考えることができます。
ここで注意したいのは、溶接継手を評価している場合は方法が異なります。
溶接継手の評価を行う場合には以下をご参照ください。
溶接継手の場合は評価が異なる
疲労強度を評価したい箇所が溶接継手である場合は注意が必要です。
溶接継手に関しては、疲労評価の方法が別にあります。
溶接継手部では疲労による破壊が生じやすく、多くの場合ここでの破損が問題となるようです。
修正グッドマンでの評価の際には応力振幅を用いていましたが、継手部の評価では応力幅を見る必要があります。
つまり、応力幅は応力振幅の二倍にあたることを考えると、より厳しい条件になっていることがわかります。
(経験的に継手部でのトラブルが多いことが想像できますね。)
評価方法
JISまたはIIWでの評価方法に準じます。
今回はJISでの評価。
継手部の種類
継手の種類によって、許容応力に強度等級分類があります。
例えば、板に対して垂直に溶接したT字型の継手であれば等級はD。
さらに、溶接方法や端の仕上げ方によって分類されます。
等級Dは線図を元にすると、一定振幅応力は84MPaであることがわかります。
(繰り返し数は10000000回以上と仮定しています。)
応力幅と許容応力値を比較
応力幅が、予想される繰り返し数における許容値を下回っていれば疲労破壊は生じないという評価ができます。
今回は、応力振幅の最大値が30MPa、最小値が-30MPaだったので、応力幅は60MPaで評価します。
一定振幅での許容応力値は84MPaだったので、60MPaは許容値内であり、疲労破壊の恐れはないと判断できます。
疲労破壊は、実験的に割り出された値であり、材料によっても異なります。
しかしながら、企業が独自に材料試験を行ってデータを蓄積しているため、ネット上で疲労試験結果を見かけることはあまりありません。
継手の等級なども含めわかりやすく書いてあるので、
鋼構造物の疲労設計指針・同解説 (単行本・ムック) / 日本鋼構造協会/編はとてもおすすめです。
以上、メモ書き程度に疲労強度の評価方法を書いてみました。
間違っている点など見つけましたら教えていただけると幸いです。
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